MCIスクリーニング検査
1.MCI(軽度認知機能障害)とは
Petersen により次のように定義されました。
- 記憶障害の訴えが本人または家族から認められている
- 日常生活動作は正常
- 全般的認知機能は正常
- 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
- 認知症ではない
即ち、日常生活はほぼ問題なく送ることが出来ていますが、認知症になる前段階の状態で、何もしなければ数年で約半数の人が認知症になる可能性があります。
しかし、MCIの段階で適切な治療を受ければ14-44%の人が改善するという研究結果が出ています。
2.アルツハイマー型認知症発症までの経緯
アルツハイマー型認知症は、アミロイドベータ蛋白という老廃物が脳に蓄積し、神経細胞を破壊することで発症します。
この蛋白は発症の約20年前から脳に溜まり始め、認知機能は徐々に低下、MCIの段階を経てアルツハイマー型認知症へと移行していきます。

3.MCIスクリーニング検査とは
アルツハイマー型認知症の前段階であるMCIのリスクをはかる血液検査です。
この検査では、アミロイドベータ蛋白の排除や毒性に対する防御をおこなっている血液中の3種類のタンパク質(アポリポタンパク質A1、補体第3成分、トランスサイレチン)を測定し、MCIのリスクを判定しています。
これらのタンパク質が低いと、アミロイドベータ蛋白が溜まりやすくなり、認知症へと移行しやすくなると考えられます。
健康診断と同じように定期的に検査を受けることで、ご自身の変化に早い段階で気づくことが出来ます。
アルツハイマー型認知症の発症年齢が70歳と考えると、アミロイドベータ蛋白の蓄積が始まる20年を逆算して、50歳を過ぎたら一度検査してみてはいかがでしょうか。
判定結果はA~Dの4段階でお知らせします。
A:1-2年に1回は検査を受けましょう。
B:毎年定期的に検査しましょう。
C:6ヶ月から1年毎の検査をしましょう。
D:二次検査をお勧めします。
なお、保険適応はありませんので自費診療となります。
APOE遺伝子検査
1.APOE遺伝子とは
アルツハイマー型認知症の発症に深く関わっているアミロイドベータ蛋白の蓄積や凝集に関係する物質の一つがアポリポタンパク質Eです。
それを司る遺伝子がAPOE遺伝子で、主にε(イプシロン)2,3,4の3種類があり、2つで一組の遺伝子型を構成しています。
そして、ε4の有無がアルツハイマー型認知症の発症と強く相関していることがわかっています。
ε4を1つないし2つ持っている遺伝子型の発症リスクは3~12倍と言われています。

2.APOE遺伝子検査とは

あなたのAPOE遺伝子型を調べることにより、アルツハイマー型認知症の発症リスクを知る血液検査です。
将来の発症の有無を判定する検査ではありません。
すなわち、ε4の遺伝子型を持っている方が全員アルツハイマー型認知症になるわけではないのです。
その発症にはこれらの遺伝子的要因以外に加齢や生活習慣なども大きく関係しています。
生活習慣の改善や適切な予防は、アルツハイマー型認知症の発症予防になることが最近の研究でわかってきています。
こうしたことから、APOE遺伝子検査でその発症リスクを知っておくことは意味があると思われます。遺伝子型は変わりませんので、一生に一度受ければ再検査の必要はありません。
なお、保険適応はありませんので自費診療となります。