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Helicobacter pylori ピロリ菌

ピロリ菌とは

胃の中に住む細菌で、胃の粘膜表面や細胞の間に入り込んで毒素をだし胃に炎症を起こします。
従来、胃酸の強い(強酸)環境の下で細菌は棲息できないと考えられていました。
しかし、この細菌自体の持つウレアーゼという酵素が、胃内の尿素を分解して作るアンモニアによりその酸を中和して、胃の中で棲息していく条件を整えています。
1982年オーストラリアのウォーレンとマーシャルという二人の医師により発見されました。
正式名称をヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)といい、らせん状(ヘリコ)の細菌(バクター)で、胃の出口付近の幽門部(ピロリ)で発見されたため、この名が付けられました。

ピロリ菌の感染経路

どのような感染経路であるかはまだはっきりわかっていません。
ただ、マーシャルの人体実験で証明されたように、口から入れば感染することは間違いないようです。
大部分は飲み水や食べ物を通じて、人の口から体内に入ると考えられています。
上下水道の完備など生活環境が整備された現代日本では、生水を飲んでピロリ菌に感染することはありません。
また、夫婦間や恋人間でのキス、またコップの回し飲みなどの日常生活ではピロリ菌は感染しないと考えられています。
ピロリ菌は、ほとんどが5歳以下の幼児期に感染すると言われています。
幼児期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生きのびやすいためです。
そのため最近では両親から子へなどの家庭内感染が疑われていますので、ピロリ菌に感染している大人からお子さんへの食べ物の口移しなどには注意が必要です。

ピロリ菌の感染率

世界的にみると先進国では低く発展途上国では高い傾向にあります。
これは上下水道などの衛生環境が影響していると言われています。
したがって、戦後急速に近代化が進んだわが国では、上下水道などの衛生環境が十分に整っていない時代に生まれ育った団塊の世代以上では80%程度なのに対し、10~20代では20%前後と著しく低く、年代によって差が見られます。
しかし、日本人全体の感染率は、2030年頃までにはほかの先進国並みに低くなることが予想されます。

ピロリ菌と胃炎

ピロリ菌に感染すると、ピロリ菌がつくりだす酵素ウレアーゼと胃の中の尿素が反応して発生するアンモニアなどによって直接胃粘膜が傷つけられたり、ピロリ菌から胃を守ろうとするための生体防御反応である免疫反応により胃の粘膜に炎症が起こります。
それが広がるとヘリコバクター感染胃炎と呼ばれる慢性胃炎となっていきます。
この状態が長く続くと胃の老化現象ともいえる萎縮性胃炎に進展していきます。

ピロリ菌と胃・十二腸潰瘍

胃十二指腸潰瘍の原因は日常生活のストレスや薬(風邪薬や痛み止めに代表される鎮痛解熱剤や血液サラサラにする低用量アスピリンなど)によるものもありますが、十二指腸潰瘍患者の90%以上、胃潰瘍患者の70~80%がこのピロリ菌に感染していることからピロリ菌が胃潰瘍・十二指腸潰瘍を起こしていることが分かり、現在ではピロリ菌に感染することが胃潰瘍・十二指腸潰瘍の最大の原因であると考えられています。
ただし、ピロリ菌に感染している方が必ず胃潰瘍・十二指腸潰瘍になるわけではありません。
実際に潰瘍ができるのは、ピロリ菌感染者の2~3%程度といわれています。

ピロリ菌と胃がん

ピロリ菌の感染が長期間にわたって持続すると、胃の粘膜がうすくやせてしまう「萎縮」が進行し、一部は腸上皮化生となり、胃がんを引き起こしやすい状態をつくりだします。
事実、約10年間にわたる研究で、胃がんになった人の割合は、ピロリ菌に感染していない人では0%(280人中0人)、ピロリ菌に感染している人では2.9%(1246人中36人)であったと報告されています。
また、ピロリ菌を除菌すると、新しい胃がんが発生する確率を減らすことができる可能性があります。
早期胃がんの治療後にピロリ菌を除菌した患者さんは、除菌をしなかった患者さんと比べ、3年以内に新しい胃がんが発生した人が約3分の1だったと報告されています。

もちろん、ピロリ菌に感染した人がみな胃がんになるわけではありません。
もしそうなら、団塊の世代以上の人はほとんど胃がんになってしまいます。ピロリ菌感染者は5-6倍胃がんになりやすいと言われています。

ピロリ菌とその他の病気

ピロリ菌が原因で発症するといわれている病気のうち、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん以外には、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、逆流性食道炎、機能性胃腸症、胃ポリープの一部、慢性じんましんの一部などがあります。

ピロリ菌の診断

内視鏡を使う方法が3つ、使わない方法が3つの6種類の検査があります。
内視鏡検査では、胃炎や潰瘍などの病気があるかどうかを直接観察して調べますが、それと同時に、胃粘膜を少し採取しそれを使って検査する方法です。

内視鏡を使う方法

1.培養法

ピロリ菌の発育環境下で5〜7日培養して判定します。

 

2.迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌が持っているウレアーゼという、尿素を分解する酵素の活性を利用して調べる方法です。

 

3.組織鏡検法

胃の粘膜の組織標本に特殊な染色をしてピロリ菌を顕微鏡で探す組織診断方法です。

内視鏡検査を受けずに済む検査

1.尿素呼気試験法

診断薬を飲んでから、服用前後の呼気を専用の袋に集めて診断します。

 

2.抗体測定

血液や尿などを用いて、ピロリ菌に対する抗体を測定する方法です。

 

3.糞便中抗原測定

糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌は胃の病気だけでなく様々な病気の原因の一つであることが明らかとなってきました。
1週間決められた薬を服用することにより胃の中からピロリ菌を排除することができます。
それにより対象の病気の予防や治療につながるのです。
研究が進むにつれその対象となる疾患も増えてきています。
特に、2013年2月からヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が追加されました。

ピロリ菌の除菌対象者

ピロリ菌除菌療法の対象となる人は、次のI〜Vの病気の患者さんです。

( I )内視鏡検査または造影検査で胃潰瘍または十二指腸潰瘍と診断された患者さん
(Ⅱ)胃MALTリンパ腫の患者さん
(Ⅲ)特発性血小板減少性紫斑病の(18歳以上)患者さん
(Ⅳ)早期胃がんに対する内視鏡的治療後(胃)の患者さん
(Ⅴ)内視鏡検査でヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と診断された患者さん

ピロリ菌除菌の実際

ピロリ菌の除菌には、胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬(PPI)と2種類の抗生物質の3つのお薬が用いられます。
この三種類のお薬を一週間確実に服用することで、約80%の方は除菌に成功すると報告されています。
1回目の除菌療法(一次除菌)で除菌できなかった場合は、再び7日間かけて薬を飲む、2回目の除菌療法(2次除菌)を行います。2種類の「抗菌薬」のうち1つを初回とは別の薬に変えて、再び除菌を行います。
成功率は約85%を超えると言われており、1回目、2回目の除菌療法を合わせた除菌率は95%近くになります。

ピロリ菌除菌の副作用について

除菌療法を始めると、副作用があらわれることがあります。
これまでに報告されているもので主な副作用は軟便や下痢です。
その原因として、抗菌薬による腸管刺激作用や腸内細菌のバランス変化等が考えられています。
その他に、食べ物の味がおかしいと感じたり、苦みや金属のような味を感じたなどの味覚異常があわられる人もいます。
これらは、多くの場合、2、3日でおさまります。
また、肝臓の機能をあらわす検査値の変動が見られることや、まれに、かゆみや発疹など、アレルギー反応があらわれる人もいます。
いずれにしても、薬をやめてしまうと除菌が不成功に終わるだけでなく、それまでの何日か飲んだ薬に抵抗力を持った菌になってしまうこともありますので、必ず主治医に相談して下さい。

ピロリ菌除菌時の生活指導

喫煙により胃粘膜の血流が低下するため除菌率が低下するとの報告があります。
可能であれば1週間だけでも禁煙をお勧めします。
二次除菌に使用するメトロニダゾールはアルコールとの相互作用が報告されています。二次除菌中は禁酒をお勧めします。

ピロリ菌とLG21ヨーグルト

LG21はピロリ菌の抑制作用、炎症改善作用が報告されています。
そして、LG21を1日2個、除菌治療開始3週間前から開始し除菌期間1週間と合わせて1か月食べると、除菌成功率が数%上がったとの報告があります。
耐性菌(お薬に抵抗力のある菌)を増やさないためにも、特に1回目の除菌時には試みるべき方法かもしれません。

ピロリ菌二次除菌に失敗したら

2回の除菌療法をおこなっても残念ながら数%の方は除菌できません。
その場合は、現時点では保険適応とはなりません(自費)が3次除菌として別のお薬の組み合わせで治療を試みることが可能です。
ただし、本院ではおこなっておりませんので、大学病院や総合病院をご紹介する形になります。

ピロリ菌の除菌に成功しても

ピロリ菌の除菌に成功すると、ピロリ菌に関連する様々な病気のリスクは持続感染時より低下したのは間違いありませんが、ゼロになるわけではありません。
定期的な検査は必要です。

除菌後の逆流性食道炎

除菌により胃粘膜の炎症がとれ、ある意味胃が若返り胃酸分泌も増加するため、逆流性食道炎のリスクが高まるとの報告があります。
しかし、その頻度は少なく、また逆に逆流性食道炎が改善した報告もあることや食道炎になってもその程度は軽いと言われています。

除菌後の再感染

ピロリ菌に感染するのは幼児期がほとんどですが、除菌成功後に再度ピロリ菌の判定をすると陽性に出ることがあります。
一応、除菌判定後1年以内に陽性の場合は除菌判定時の菌が少なかったっために陰性に判定されてしまった偽陰性例の可能性があります。
しかし、偽陰性を否定出来て1年以上してからの判定で陽性に出た場合は再感染と考えられます。
原因ははっきりしませんが1%前後とまれなことです。